台東で南国のフルーツを味わう

台東は台湾東南部に位置する人口一〇万あまりの地方都市。卑南平野と呼ばれる穀倉の集散地として発達した町である。訪れてみると、町並みは結構な賑わいを見せており、路地裏にまで活気が満ちているのがわかる。

 ここは台湾を代表するフルーツの産地である。温暖な気候と適度な雨量。そして豊かな土壌と、農業に必要な三要素を満たし、さらに南国特有の強い陽射しと年間を通じて程良く吹き抜けるそよ風がフルーツの甘さを育む。これほどまでにフルーツの栽培に適した土地は台湾でも多くはない。

 この町にはフルーツだけを専門に扱うという珍しい夜市がある。台東の人々が故郷を自慢する時には必ず挙げられるという魅惑のスポットだ。今回はこの水果(フルーツ)夜市を紹介しよう。

 台東のメインストリートである中山路は昨年廃止された台東旧駅から市街を貫くように伸びている。台東駅の名は郊外に設けられていた台東新駅が継承しているが、繁華街は今も旧駅と中山路に残っている。

 この中山路から正気路という小道を入る。そこには小さな屋台がずらりと並んでいるはずだ。足を踏み入れただけでも、フルーツの芳香がほのかに漂ってくる。数種類の果実の香りが混じり合い、独特な芳香をおりなしている。

 屋台には色鮮やかなフルーツが無造作に積まれ、裸電球の光に照らされている。山積みになったその量にも圧倒されるが、色合いの美しさにも目を奪われてしまう。切り売りされている真紅のスイカ、鮮やかなオレンジ色のパパイヤ、赤紫のライチ、淡い緑のグワバなど、いずれも絵に描いたように美しい。

 台東のフルーツは種類が豊富なことも特筆されている。マンゴーやバナナ、パイナップルといった日本人にもなじみのある南国フルーツはもちろん、台湾特産のレンブ(ローズアップル)や独特の柔らかさと爽やかな香りで知られるグワバなど、見逃したくないものばかり。また、トロピカルフルーツばかりではなく、山岳地帯で栽培された梨や桃、柿もあり、さらに、ランブータンやマンゴスチンなど、外国からの輸入品も店先を飾っている。その品種を確認していくだけでも結構な時間を要してしまうほどだ。

 最後に台東特産とも言うべきフルーツを二つ紹介しておこう。それは釈迦頭とジャックフルーツだ。

 釈迦頭はその名が示している通り、お釈迦さまの頭部を彷彿させる外観をもったフルーツ。果肉は純白で甘みが強いものの、ほのかな酸味があるためか、後味はサッパリしている。基本的には春から初夏にかけてが旬とされるが、最近は品種改良が進み、年間を通じて食することができる。

 ジャックフルーツは現地では「波蘿蜜」と呼ばれ、その大きさで知られている。スイカ以上の大きさを誇り、直径50センチを上回るものも珍しくない。屋台では切った状態で売られるのが普通だが、甘みがかなり強く、そう多くの量は食べられないので、購入するときには注意しよう。

 ここはガイドブックなどであまり紹介されなかったため、長らく隠れた名所となってきた。素朴な雰囲気を保った台東のフルーツ夜市。各店ではフルーツを購入すると手頃な大きさに切って、パックに入れてくれる。南国ならではの味覚を味わいながら、散策を楽しみたい。

(日本航空ファーストクラス機内誌「アゴラ」に掲載した文を加筆修正)