おろかな夫ある村に、若い夫婦が住んでいました。母の誕生日に、妻は、布、くつ、蕎麦、アヒルなどを買って来て、「すみませんが、これを郷里の母に届けてください」と、夫に頼みました。夫は妻の言うなりにそれをもって出かけました。
ところが、途中で、大風が吹き出し、路端の竹やぶが、きゅうきゅうとと鳴り始めました。着物がなくて、寒いのだろうと、夫は籠の中から、布を取り出し、竹のまわりにぐるぐる巻きつけました。
それから、しばらく行くと、手に提げていたアヒルがガアガアと鳴き出しました。夫はのどが渇いているのだろうと、アヒルを川の中へ放してやりました。アヒルは喜んで向こう岸の方へ泳いで行きました。なかなかアヒルが戻ってこないので、蕎麦をくつに結び付け、くつを舟にして流しながら、アヒルよ、そのくつに乗って、早くこちらへお帰りと呼びました。それでもアヒルが知らぬ顔をしているので、夫はとうとうあきらめて、せめて蕎麦だけでも取り戻そうと、蕎麦をたぐりよせました。けれども蕎麦もすぐに切れてしまいました。
仕方なしに、夫は無一文で家に引き返しました。妻は門に立って心配していましたが、夫があまりにもおろかなことを知り、そのまま離縁してしまったそうです。