週刊プロレス掲載記事   

台湾で出会ったプロレスファンたち

nwoシャツを着た青年はニヤッと笑った

  ある日、私が台北市内を散歩していた時のことです。自慢のnWoシャツを着込んでいい気分だった私は、前方から歩いてきた青年を思わず見入ってしまいました。なんと、その青年は、赤いnWoシャツを着ているではありませんか。「ついに台湾にもnWo旋風到来か!」と心中喜びながらも、あっさりすれ違ってしまった私。しかし、異国で出会った「同志」というのはやっぱり気になるもの。しばらくしてから彼の方を振り向いてみました。するとどうでしょう。彼も私のことが気になっていたらしく、こちらを見ていたのです。

  一度はすれ違い、100mほど離れた二人なのですが、心の一部分はしっかり通じ合っていたようです。私はあいさつがわりにウルフパックのポーズ。彼もそれに応えてくれました。その後、二人が意気投合したのは言うまでもありません。

  テレビでは日本以上にプロレスを見るチャンスに恵まれた台湾ですが(なんといってもプロレス専門チャンネルがありますからね)、最新の情報は2週間遅れでやってくる週刊プロレスが頼みの綱。日本語を少ししか解さない彼は目下、週プロを読むために日本語を学習中とのことでした。

マサ斎藤を見て逃げ出す子どもたち

  チビッ子プロレスファンだって少なくありません。彼らと一緒に観戦していると、賑やかで、それなりに楽しいのですが、テレ朝の「ワールドプロレスリング」の放送時には、それはそれは興味深い現象が見られます。

  番組冒頭の解説者紹介の一場面。辻さん、柴田さんときて、マサ斎藤選手の顔がアップになった瞬間、みんな「ワーッ」と、テレビの前から逃げ出すのです。中には泣き出してしまう子なんかもいて、あまりの反応の大きさにこっちが驚いてしまいます。

  私も面白がって、何人かのレスラーの写真を見せます。そして、「誰がイチバン怖い顔?」と質問したところ、ムタやカブキなど、怪奇系ペイントレスラーはそれほど怖がられていないという意外な事実が判明。もっとも恐れられていたのは……やっぱりというか、なんというか、眉毛のない後藤達俊選手でした。

ザ・コブラにしびれる女子高生ファン

  ちょっと古い話しで申し訳けないのですが、ザ・コブラを覚えていますか。日本では素顔の彼ですら見なくなって久しいのですが、台湾ではまだまだ人気者なんです。

  私の友人で女子高生のプロレスファンがいるのですが、彼女の好きなレスラーがザ・コブラ。どこがいいのかって聞いたら、日焼けした素肌の上にジャケットをはおって入場してくる、あのセンスがいいのだそうです。

  じゃ、M・テイオーはどうなのかというと、これはダメなのだとか。理由は「色白で弱そうだから」と厳しい一言が返ってきました。うーん、若い女の子っていうのはどこの国でも難しいものですね。

ザンギエフの毛深さに見入る大人たち

  これもまた、少しばかり懐かしい選手。ロシアの強豪・ビクトル・ザンギエフさんは今、何をしているのか、私も気になっているところなんですが、それは台湾人ファンも同じようです。

  南部の高雄市で知り合った中年ファンは私にこんなことを聞いてきました。「ロシア人ってのはみんな、あんなに毛深いのかい?」

  これまた簡単には答えられない質問です。どうやら彼はテレビでビクトルザンギエフ選手を見てしまったようなのです。彼の話しは続きます。 

 「俺の知り合いにも毛深いヤツはいる。だけど、背中に毛の生えているオトコを見たのは初めてだ。しかもあのロシア人、肝心の頭髪の方はサッパリじゃないか 彼の疑問は無理もありません。これは人種的な問題なのですが、台湾人の大部分を占める漢民族は基本的に体毛が少ないんです。

  でも、彼の追究心はここにとどまらないのが何と言ってもスゴイ。「俺、ロシアまで行ってザンギエフ選手の背中の毛を1本もらってこようかな」  彼の目が結構マジだったことを1つだけ、付け加えておきましょう。

ヒールホールドを教えてくれとせがむ少女

  台湾には漢民族のほかに、その昔、高砂族と呼ばれた原住民族の人々も住んでます。つい100年前までは首狩りの風習をもっていた人々で、この人たちもまた、大の格闘技好きです。

  先ほどご紹介したテレビのプロレス専門チャンネルも、都市部以外に、山地での普及率が高くて驚きます。なんと、80%の家庭にケーブルテレビが入っているそうです。この山地の住民の大半が原住民族の人々なのです。

  私も仕事柄、調査や取材などで、ヤマに入ることが多いのですが、先日、タイヤル族の小さなムラを訪れた時、たまたま仲良くなった17歳の少女に、「ヒールホールドの掛けかたを教えてください」と言われた時は困りました。

  さすがに、ヒールホールドを知り合ったばかりの少女に掛けることなんてできません。なんとか、お断りし、別の青年に掛けたのですが、これが縁で、彼らとはすっかり仲がよくなりました。ここまで行くと、立派な文化交流です。プロレスはココロとココロをつなぐのです。

  日本にいると、なかなか情報が入ってこない台湾プロレス事情。ぜひ一度、遊びに来てください。ホテルでチャンネルをひねれば、普通にプロレスが見られます。字幕も出ますから漢字に翻訳されたプロレス技を見るのもおもしろいですよ。

(週刊プロレス99年6月第2週分に掲載)

もどる